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A 生態系保全統合農法を推進する村づくり

この事業は、タイ北部の農村において、持続的農業を普及させるための人材育成と農業技術についての様々なトレーニングを実施するプロジェクトです。オムコイ郡・メーハット川流域にある農村・ファイコーン、ピトゥキ、ソプランの3つの村を事業地として、持続的農業の普及と、それを定着させ他村への波及を図るための人材育成を行うことにより、村の経済的自立と自然環境保全の両側面の促進を図ります。

本事業においては、持続的農業の手法として「統合農法− Integrated Farming 」を採用しています。これはタイ国において推奨されている農業システムの代表的なもので、少なくとも 2 種類以上の農産物を同一農場で生産し、これを稲作と魚の養殖、あるいは畜産(養豚)と魚の養殖および野菜の生産という組み合わせで行うものです。さらに複合的な利益を得られるように、ため池の周囲に木本系の植物(果樹など)を植えます。 これによりため池に日陰ができ水の蒸発が防げるとともに、水温上昇を緩和して養殖魚を保護する役割も果たします。


統合農法農園


村人の養魚池。 池の周りにも様々な果樹が植えられている

チェックダム作り

森の中にコーヒーや果樹を植えるアグロフォレストリー

統合農法のメリットは、農業廃棄物や家畜の排泄物を肥料として農作物の栽培に利用でき、化学肥料の使用を極力抑えることができること、それに加えて複数種の農作物を植えることで土壌が保全され持続的な土地の利用が可能になること、ため池を作ることにより農業用水の枯渇を防ぎ安定的な耕作を可能にし、同時に魚を養殖して販売したり、果実を収穫したりするなど、食料自給や収入の向上が図れることなどがあげられます。

このシステムではため池が重要な役割を果たしますが、本事業ではメーハット川流域に位置する村々を対象としているため、この川に「チェックダム(小型堰)」を構築し、そこからパイプで水道を引いて養魚池へ注ぎ込み、農業用水としても利用する方法を考案しています。このチェックダム作りはすでにメーハット川流域に位置する村々の自然資源保全活動として進められているもので、各村に定着しつつある水源保全の方法です。チェックダムの設置は、水の枯渇による山林の土壌劣化を防ぎ、同時に村人が利用できる水源の確保に大きく貢献します。養魚池への水の供給や複合農業用水、生活用水として利用する水を 1 年中枯渇させずに維持するための重要な活動です。

また本事業では環境を保護しながら収入を確保するためのアグロフォレストリーを統合農法とセットにして導入しています。 統合農法を導入した農家では、ある程度自給が可能になっても子供の教育などに必要な現金収入を得るまでには至らないことが多いため、現金確保のために短期間で収量を上げようと再び化学肥料に頼る慣行栽培に戻ってしまい、さらに周辺環境や畑の状態を悪化させてしまうケースも見られることから、現金収入を確保できる方法を並行して実施する必要があります。
共同で苗作りを行い、村の共有地や自分の家の裏山の森にコーヒーや果樹を植えます。収穫した実はチェンマイから買い付けにくる業者などに販売して現金収入を得ることができます。


上記の統合農法を村に普及・浸透させるための具体的な方法として以下の活動を実施しています。

 1.村人の意識向上のためのキャパシティビルディング・プログラムの実施
     ・問題分析トレーニングマッピングトレーニング・クロスビジット
 2.統合農法の技術導入のためのトレーニング
     ・チェックダム及び水道設置、養魚池作り、養魚・養鶏技術、堆肥作り
     ・アグロフォレストリー(果樹・コーヒ植林)
 3.統合農法に付随する管理手法の導入のためのトレーニング
     ・種銀行システムの確立(在来種の種の管理及び栽培方法のデータベース作成)
 4.活動継続性を確保するための人材育成プログラムの実施
     ・婦人会を組織し、種銀行の管理運営ができるようにトレーニング

「種銀行」とは、統合農法の方法として畑に季節に合った食物が植えられること、なるべく多種の作物が得られることで、食の豊かさが推奨されていることから、地元でとれる種を保管・管理するための種の銀行をつくるという試みです。
この種銀行の活動を通じて、種の保管、利用技術が向上するとともに、それを運営管理するためのキャパシティ・ビルディングが行われ、持続可能な活動の基盤づくりになります。

スペース

種銀行建設のためのセメント作り
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種銀行として使われる小屋
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種銀行の管理を担当する婦人会 メンバー



ファイコーン村インタビュー
ノワ・センソンナサンリ氏


ノワさんは、このプロジェクトが始まる前から農薬や化学肥料を使っての農業に疑問を持ち、地道に伝統的農業を営んできました。このプロジェクトでは、堆肥作りや種銀行のトレーニングに参加し、自身も学びつつ、自分の経験を他の人に伝授する知恵者としての役割も果たしています。チェックダムの効果も学び、自分の畑に水道を引く計画を立てています。

Q:ノワさんの農業について教えてください。
「8ライ※で陸稲、2ライで水稲を育てています。また10ライでマンゴー・野菜・コーヒーを アグロフォレストリーで育てているが、コーヒーは植えてから長年経ち収量が減ってきているため、このプロジェクトを通じて剪定技術を学んでいるところです」  ※ライ−面積を表す単位。1ライ=0.16ha

Q:活動を実施してきて出ている効果を教えてください。
「若い人たちに教えることは楽しいが、なかなか理解してくれなくて大変だ。若者たちは換金作物ばかりに目が行き、地道に伝統的な作物を育てていくことには興味がないようで困ったもんだと思う。焼畑や慣行栽培のせいで、 村の環境は少しずつ悪くなってきていると思う。森が減ってきのこや山菜も採れなくなってきたし、薪も遠くまで取りに行かなければならなくなってしまった。
しかしこの村も移動式農業から定住型農業に代わりつつある。このプロジェクトが来て、今まで使っていた土地をどのように活用していくのかを皆で考えるよい機会になったと思う。このプロジェクトの中で私自身に役割が与えられ、それを村に示してくれたことは何よりも嬉しい。統合農法に参加しようとする農家と協力し合って、生産量や収入をより増やしていける体制を整えていこうと思う。」

スペース

ノワさんの統合農法による農園
スペース

ノワさんの畑は生き物がたくさんいる
スペース
ノワさんとその家族



※ このプロジェクトは、外務省"日本NGO連携無償資金協力"の助成を受けて実施しています。  




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